一級建築士製図 過去問勉強法
一級建築士の学科試験においては、過去問を必死に勉強する人が多く、過去10年分の過去問を勉強すれば合格できる。 という人もいるくらいなのに、
一級建築士の設計製図試験においては、あまり重要視していない人が多いですが、けっこう重要です。
初受験の人は、たしかに過去問の勉強に時間を割くのは、なかなか難しいと思いますが、2回目以上の受験生は、1月~7月の半年以上の勉強時間が確保できるので、その最初の勉強として過去問の勉強を取り入れたらどうでしょうか。 必ず得るものはあります。
一級建築士の設計製図合格発表と同時に、試験元の標準解答例というものが2案公開されます。
この標準解答例がどのような意味を持つのかを理解する必要があります。
この標準解答例は、あくまで合格者の標準的な解答であって、模範解答ではないことを知っておく必要があります。
つまり、これぐらいの図面を描き上げれば、合格できますよ。と言っているのであって、これが完璧な図面ですよとは言っていません。
標準解答例1と2を見ると、いろいろな妥協点や不十分なところが見えてきます。
標準解答例1と2を見比べて、2案とも同じように解答している部分は、試験元が重要視した点で、2案とも違う解答している内容は、重要視していない内容だったと読み取れます。
その重要視しているであろう内容を知ったうえで、試験問題をもう一度見てみましょう。その重要視していたことが問題文ではどのように表現されていたか?
これが分かるようになると、試験本番でも、その重要視している点を真っ先に検討できます。
これが分からないと、すべてを完璧にしようと思い、いつのまにか試験元が求めているものと違う方向の図面になってしまい、自分では完璧な図面を仕上げたつもりでも、試験結果は不合格となります。
過去問を研究していると、一級建築士の製図試験において、採点上重要な内容が、問題文のどこに記載されているかを理解することができます。
試験元が要求している重要な内容というのは、「設計条件の主文」→「計画に当たっての留意事項」→「計画の要点」の順に示されていることが多いです。
この3つは同じようなことを言っているけど、「設計条件の主文」では、ぼんやりとしたコンセプトのような内容で、具体的にどうして欲しいのかが分からないことも多いです。
「計画に当たっての留意事項」は、主文のコンセプトをより具体的に示してくれています。
さらに、「計画の要点」では、その留意事項を質問形式にしてくれているので、試験元が何を求めているのか、より理解が深まります。
会社の世界に例えると分かりやすいかもしれません。
「主文」は「社長の指示」で、仕事の方針を示してくれています。
「計画に当たっての留意事項」は、社長の指示を元に作った「部長の指示」で
より具体的な指示事項になります。
平成30年の主文を例にとって、主文がいかに大切かを理解してみましょう。
平成30年の主文では、3つの内容があります。
「(1)地域住民が各種スポーツを楽しみながら健康増進を図ることができ、スポーツをとおした世代間交流ができる施設とする」
「(2)パッシブデザインを積極的に取り入れた計画とする」
「(3)本建築物は、旧小学校 の活用・再生を図るために、隣地のカルチャーセンター、全天候型スポーツ 施設及びグラウンドと一体的に使用するものである」
これを見て、(2)のパッシブデザインや、(3)の一体的使用についてはどうすれば良いかだれでも理解できたと思います。
(1)のキーワードは「世代間交流」ですが、多くの受験生がこの文言を軽視してしまったと思いますが、試験元としては、この世代間交流を、パッシブデザインと一体的使用と同様 重要な内容として扱っていたものと想像しています。
では、この「世代間交流」をどうやって解答に表現するか?
それは、標準解答例を見ると、「コンセプトルーム」に表現して欲しかったことが読み取れます。
標準解答例1では、コンセプトルームを「食育」として利用しています。
室内には、セミナー室、ダイニングルーム、キッチンスタジオがあり、
おそらく記述でも、地域のおばあちゃんが講師となって子育て世代と交流するということが書けるでしょう。
標準解答例2では、「子育て支援」となっています。
図面にはミニキッチン、畳敷き、ソファー、テーブルが描かれています。
おそらく記述でも、地域のおばあちゃんが協力して、子育て世代と交流しながら、子育ての悩みを聞いてあげたり、一緒に子どもの世話をしたりする場所だと書けるでしょう。
過去問の勉強で、作図表現も学んでほしいと思います。
例えば、駐車場、駐輪場、広場などの外構表現、寸法線の書き方、什器の表現方法など、学ぶところは多いです。
総合資格などの解答例よりもだいぶ簡略化された表現になっていると気づかされるでしょう。
もちろん、総合資格の解答例のように作図密度が高い図面の方が有利ですが、それが合格の絶対条件ではないと理解できるだけで、本番の優先順位の正しい考え方が身に付きます。