一級建築士製図 過去問の設計条件主文

設計条件主文の正しい読み取り方を知るべし

課題文の最初に書かれている設計条件の主文。
ここに書かれていることが具体的な要求内容ではないことが多いことから、 軽視する受験生が多い。
しかし、設計条件の主文には、出題者がこの課題において一番大切にしてほしいことを書いてある重要な部分なので読み飛ばさず、出題者の意図を読み取る習慣をつけておきましょう。


設計条件主文の重要度

設計条件主文の重要度が年々増しているように感じるのは私だけだろうか。
平成27年の「市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅 」までは、設計条件主文といえば、5~6行だったが、平成28年、29年は9行に突然情報量が増えた。
さらに、平成30年の「健康づくりのためのスポーツ施設」では11行の337文字となり過去最高の情報量になった。

室名の記載は重要な室と心得よ

毎年ではないが、主文に具体的な室名について触れられることがある。
これは、出題者がその室を重要視している証であり、配置において最も気を遣うべき室となる。 主文を読んで、その室についてはマーカーするなどして目立つようにしたい。

例えば、2010年の小都市に建つ美術館においては、設計条件主文にアトリエと屋外創作広場について言及されているが、この配置で苦しんだ人はほとんど合格できていない。

年度 課題 主文で出現した室
2009 貸事務所ビル 貸事務室
2010 小都市に建つ美術館 アトリエ
屋外創作広場
2011 介護老人保健施設 なし
2012 地域図書館 小ホール
展示ギャラリー
会議室
2013 大学のセミナーハウス なし
2014 温浴施設のある「道の駅」 地域特産品売場
レストラン
温浴施設
2015 市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅 機能訓練室、
浴室
レストラン
2016 子供・子育て支援センター 保育所
児童クラブ室
子育て支援施設
2017 小規模なリゾートホテル なし
2018 健康づくりのためのスポーツ施設 なし

誰が使う施設か

設計条件の主文には、誰が使う建物なのかの言及が必ずある。
そこで、よく登場するのが「地域住民」という言葉である。2012年、2013年、2015年、 2017年には、地住民の交流という表現が登場している。

その他にも、「地域住民の趣味の活動」や「地域住民が利用するレストラン」など、地域密着型を重視している傾向がある。

その地域住民が利用するであろう室については、利用しやすい1階の分かりやすい位置として、記述や図面の補足で、「地域住民が気軽に利用できるように1階の分かりやすい位置に計画した。」や、「地域住民の交流を促進するために、1階エントランスからアクセスしやすい位置に計画した。」などとアピールしたい。


施設の目的

この建物が何の目的で建てられるものなのかを、この設計条件の主文から読み取る必要があります。
少し前までは、この目的を理解せずとも、問題はなかったのですが、2017年、2018年に登場したコンセプトルームで、この目的を理解する重要度が増しました。
つまり、コンセプトルームについては、この設計条件の主文に記載されている施設がある目的を理解して、それを具現化する必要があるからです。
これを外して、目的と関係のないコンセプトルームを作ってしまったら、どれだけ素晴らしいアイデアでも減点される可能性があります。

採点上重要な内容を示している

設計条件主文に書かれている内容は、この建物で重要視したい内容となっています。
ここに書かれている内容は、おそらく、この後に読む「留意事項」「計画の要点」「各室の特記事項」などに、さらに詳しく具体的な要求が書かれていると思います。

例えば、平成30年の「健康づくりのためのスポーツ施設」では、設計条件主文で3つの重要テーマを、投げかけている。

「地域住民が世代間交流できる施設とすること」、「パッシブデザイン」、「隣地のカルチャーセンターなどとの一体利用」の3つです。

この3つについては、課題文を読み進めていくと、留意事項や計画の要点で、さらに詳しく出題者が求めていることが書かれているので、これらが重要であることはほとんどの人が認識できるが、たくさんある留意事項の中で、特にこの3つが重要であることを認識する必要がある。
平成30年は、この3つを図面と記述でうまく表現できた人は、プールの大きさが多少足りなくても、上下足の履き替えのゾーニングがうまくいかなくても合格できたと思われる。

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