美術館の分館 一級建築士製図

令和元年課題発表

令和元年の一級建築士 設計製図試験の課題が発表されました。


◆課題名
「美術館の分館」

◆要求図書
1階平面図・配置図(縮尺1/200)
2階平面図(縮尺1/200)
3階平面図(縮尺1/200)
断面図(縮尺1/200)
面積表
計画の要点等

(注1)
・既存の美術館(本館)の隣地に、美術、工芸等の教育・普及活動として、市民の創作活動の支援や展示等を行うための「分館」を計画する。

(注2)
・屋上庭園のある建築物の計画

(注3)
・建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)

今年は、図書館や美術館などといった展示系が出題されるのではという憶測があったので、 総合資格や日建学院に通って勉強していた長期の生徒には、ある程度対策ができており有利に働くでしょう。

この美術館の分館の設計製図はどのように対策するべきか、実際の建物はどんなものなのかを探っていきたいと思います。



過去の美術館の出題

美術館の課題というのは、2010年(平成22年)「小都市に建つ美術館」、 1994年(平成6年度)「地方都市に建つ美術館」などがある。
ただし、どちらも2階建だったので3階建である今年の課題は難しくなるものと思われます。

「分館」であることの意味

今年の課題名は、近年にない短さでしたね。
「美術館の分館」というものがどんなものか、イメージできるだろうか?
おそらく、同じ敷地内に美術館の本館が存在していて、その本館との一体的利用を求められるとともに、 分館への直接アプローチも考えると、今年も去年と同様、複数のエントランスが必要になってくるパターンを想定できます。
複数というのは、例えば1階の場合、南側と北側にエントランスを設けて通り抜けにする場合や、 南側と西側のように、設ける場合もあります。
課題条件により、どの方向にエントランスを設けて、どのようなアプローチ計画にするかが、 大きな採点ポイントになるかと思います。

昨年もA2というビックサイズの課題文を配布され、そこに描かれていた敷地図から 敷地の周辺環境を丁寧に読み取って、アプローチ計画をする必要がありました。
うまく読み取れず、東側や南側だけからアプローチとした人の多くは、不合格となりました。
合格者のほとんどは、周辺環境をうまく読み取り、南側と西側と北側の3つエントランスを設ける等、 アプローチに対する工夫が見られました。

今年の「美術館の分館」についても、「本館からのアプローチ計画」「分館への直接アプローチ計画」を 両方考えるのか、それとも、本館でチケットを購入して、一旦本館に入館した人しか分館に入館できない というアプローチの可能性もあります。
これは一級設計製図試験の当日の課題文を見てからの判断になるので注意が必要です。
これを間違えると、一発ランク4の可能性があります。

しかし、分館だからといって、となりに本館があるとは限りません。
例えば、熊本県立美術館は、本館と分館があることで有名ですが、完全に別の場所に立地しています。
北九州市立美術館も同様です。
ただ、小規模な美術館ということが言いたいだけの分館の可能性もあります。
単独だとしたら、例年通りシンプルな課題となりそうです。

駐車場からのアプローチ計画

さらに、「駐車場からのアプローチ計画」も重要です。
「美術館の分館」に直接アプローチできる場合、駐車場の計画も課題文から丁寧に読み取る必要があります。
求められている駐車場は、本館と分館とで共用するものか、それとも「美術館の分館」として単独で設けるものか、 どちらかを読み取る必要があります。
たとえば、兼用する必要がある場合は、本館のエントランスと分館のエントランスを近接させて、 その両方への敷地内通路を確保する必要があります。
しかもその敷地内通路と、管理者動線や、美術品やレストランへの搬入動線が交錯したら大減点です。

駐車場については、近隣に駐車場が既に設定されている可能性もあります。
その場合、その近隣駐車場からの利用者動線を考える必要があります。
その利用者動線と、管理者動線や搬入動線と交錯しないか考える必要があります。



搬入動線への配慮

「美術館の分館」への美術展示品の搬入経路は、本館から行うのか、直接 分館へ行うのか、 それとも両方が求められるのか、複数のパターンが想定できるため、当日丁寧に課題文から読み取ることが大切です。
また、その準備として、いろいろなパターンを想定して課題を整理しておく必要があります。

また、美術館といえば、カフェやレストランがあることも想定されます。
もしレストランの場合は、厨房への搬入動線も考慮する必要があり、 それらの搬入動線は、利用者動線と交錯しないことが求められます

2階からのアプローチ

アプローチが1階のみであることが多いですが、 過去に2階からアプローチする必要がある本試験課題が出題されたことがあります。
例えば、平成20年度(2008年)「ビジネスホテルとフィットネスクラブからなる複合施設」です。
これは、市街地が建築予定地になっており、駅と連絡するペデストリアンデッキがすでに存在していました。
そのペデストリアンデッキからもアクセスが必要という難易度の高い課題でした。

今年の「美術館の分館」という課題については、通常のアプローチは1階で、 既築扱いの本館とは2階アプローチ指定の可能性もあります。
その際のポイントは、1階エントランスからの動線と、2階本館からの動線をどうつなげるかでしょうね。
普通に考えられるのは、1階から2階に上がる階段を大きめの吹抜けの中に設けることで視覚的な連続性を作ることでしょうか。
50平米を超えるような吹抜けを要求されたら、ヒントになるでしょう。

さらに、既築扱いの本館とのエキスパンションジョイント等の記述が求められたら、面白いかもしれませんね。

こんなこと言いましたが、実際は、普通に1階からアプローチの方が可能性がはるかに高いです。

美術館の分館「ゾーニング」

いくら公共施設といっても、無料ということはないと思います。
エントランスの分かりやすいところに、チケット券売機やチケット販売窓口を設けて、お金を徴収する必要があります。
これは、既築扱いの本館でまとめて行うのか、美術館の分館 単独で行うのかは、当日の課題を見てみないと分かりません。

有料ゾーンと、無料ゾーンを明確にゾーニングできるかどうかも問われます。
昨年のスポーツ施設では、上足と下足のゾーニングが問われ、記述でも出題されました。
今年は、有料と無料のゾーニングではないかと予想します

過去には、営業時間によるゾーニングが問われた問題が主題されたことがあります。
もし本館と隣接していて、本館よりも別館が早く閉館するような場合や、 別館内にあるレストランが早く閉店する場合など、営業時間が混在するケースでのゾーニングも勉強しておくべきでしょう。

本館からは離れて立地している場合、分館単独で考

屋上庭園

屋上庭園は、製図試験を難しくする要素の一つですが、今年は最初から指定してきました。
これは今までの事前発表の内容では初めてではないでしょうか。

まず、屋上庭園を計画するうえで、最初に考えることは、「誰が利用する屋上庭園なのか?」ということです。
屋上庭園はお金を払って入場した人しか入れないプライベートなものなのか、 それとも、お金を払っていない人に向けたパブリックな施設なのか、課題文から読み取る必要があります。

これをさらに発展させて、屋上庭園と建物内部との動線計画を考えます。
共用ホールからのアクセスは必要か?
特定の所要室からのアクセス指定はないか?
もしかして両方必要か? 等
今年は屋上庭園の配置計画+動線計画が最重要課題になりそうです。

次に、屋上庭園の設置階です。
2階の屋根(3階床面)に計画するべきか、1階の屋根(2階床面)に計画するべきかは、悩みどころになるかと思います。
おそらく、当日の試験では、設置階は指定されない自由度の高い問題になるかと思いますが、 自分の中で、どのようなときに2階の屋根として計画し、どのようなときに1階の屋根に計画するのかを ある程度、想定して整理しておいた方がよいでしょう。

さらに、屋上庭園内に、美術品を展示するスペースを求めてくる可能性があります。
実際に、平成6年度「地方都市に建つ美術館」では、ブロンズ像(5点)を展示する屋外展示スペース(250㎡以上)を求めてきました。
展示スペースがあるということは、屋上広場内にも利用者通路を設けて、利用者動線に配慮が必要になります。
毎年、植栽とベンチを描いて終わっていた屋上庭園ですが、今年の屋上庭園は奥が深そうです。

また、屋上庭園といえば、日照条件も指定される可能性があります
「日当たりの良い」等の条件がつけば、南側に配置するべきですが、 今年は、3つ目の注意事項に、意味ありげに、「敷地条件(方位等)や周辺環境に配慮して計画するとともに」という記載があります。
これは、方位が振れる可能性を示唆しているのでしょうか。
もし45度左に方位が振れるようであれば、日当たりの良い屋上庭園は、 紙で言うと右下がベストポジションで、左下、右上も候補に挙がってきます。

もし、建物の形状が凸凹してしまう場合、凸部分の上階を屋上庭園として計画することは、慣れた人にとっては定番のテクニックかと思います。
その凸部分が右上に出来てしまう場合、上側が北の方位なら、そこに屋上庭園を計画することは日照配慮の点では難しいと思いますが 方位が振れている場合は、逆に、右上の日照条件は良好の可能性があります。
今年の課題の屋上庭園は、紙の下側だけの一辺倒で計画していたら、痛い目に会いそうです。
さらに言うと、中庭にして、そこを屋上庭園にすることもありえます。

大空間の設計

直近の美術館の課題は、平成22年の「小都市に建つ美術館」となりますが、 そこでは、「天井高5m以上の無柱空間」という市民ギャラリーという所要室が求められました。
さらに、エントランスホールの特記事項に、「吹抜けを設け、吹抜け部分に展示部門のホワイエへの主動線として階段を設ける」と記載があり、 建物内部の建築計画が難しかったという記憶があるベテランの受験者は少ないと思いますが、難しかったと聞いています。

天井高指定と無柱空間は、直近の傾向としては定番の指定で 今回の美術館の用途から考えて、大空間は出題されるものとして準備しておくとよいでしょう。
例えば、「4mのブロンズ像を設置」とか、「縦5m×横4mの巨大な絵画を壁掛けで提示する」等、 遠回しに指定するケースもあるので注意して課題の読み取りをしましょう。

高さと面積に注意

今年の事前発表の注意事項(注3)は、下記の通になっています。

「建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)」

去年も似たような内容で(注3)がありましたが、違う点が2つあります。
1つ目は、「高さの制限」が追加されていることです。
高さ制限は、具体的には、「絶対高さ制限(高さの限度10mまたは12m)」の他、 「道路斜線」「隣地斜線」「北側斜線」など、用途地域別に規定があるので、出題される用途地域に合わせた高さ計算が必要になります。
わざわざ追記してきたわけですから、きっと重要な採点ファクターとして課題に出てくるのでしょう。

もう一つは、「建蔽率、容積率」です。
これも、昨年の注意事項に記載はありませんでした。
昨年は、ランク4が25.9%という驚異的な数字でした。
つまり、4人に1人がランク4ということになります。
ランク4というのは、設計条件・要求図面等に対する重大な不適合 があるとして、 他がどれだけ良くても、不合格という結果です。
この原因は、課題に指定があった建蔽率に違反している人が多くいたのではないかとささやかれています。
実際、私の知っている人でも、何人か建蔽率オーバーの人がいました。
さらに、容積率も気になります。
毎年、容積率については、あまり気にしなくても解ける問題ばかりだからです。
もしかして、今年の問題は、延床面積の最大値は示されず、建ぺい率と容積率で建物ボリュームを決めるような問題になるかもしれません。

製図スピード2時間30分を目指せ

今年も、梁伏図の出題はなく、3平面プラス断面図でしたね。
一般的には、梁伏図は15分~20分ですぐに描けるようになるので今年学科合格した初受験の人にもすぐ対応できることと、 直近では梁伏図が出題されていないことから、既受験生の方が有利な課題条件ですね。
3平面ですから、初受験生は、まず作図力強化に時間を取られるでしょう。
まずは8月中に、作図トレース3時間を目指しましょう
既受験生は、2時間30分を目指しましょう
本番は、今までにない作図を求められたり、いつもよりも丁寧に描いてしまうため、プラス10分~20分かかると思った方が良いです。

「美術館の分館」の建築物を見学する

まずは、実在する美術館はどのような計画になっているか、調べるところから始めると良いでしょう。
たとえば、建築資料の本を買って読むのがいいですね。
おそらく、毎年のことですが売切れになっているかと思うので、電子書籍(Kindle版)であれば、売切れはなく、すぐダウンロードして読めるので便利です。

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建築思潮研究所が出版している建築設計資料という本が有名でしょう。
さらに、実際に建築されている美術館を見学するのも勉強になります。
分館というのにこだわらなくてよいと思いますので、 近くにある普通の美術館、できれば小規模な美術館を探して見学してみると良いでしょう。

おすすめの見学したい建築物がありましたら、ここで改めて紹介したいと思います。

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