一級建築士製図の文字入れレタリングのスピードアップ作図法
第8段階では、いよいよ文字入れをしていきます。
文字入れとは、レタリングとも呼びますが、室名、室の面積をはじめとするあらゆる文字を入れていく工程です。
ここは25分以内を目標としましょう。
製図文字という言葉を聞いたことがあるだろうか。 これは昔 CADがなかった時代、青焼きと言われる手書き図面を
その建築に関わるすべての人が見ることになることから、誰が見ても分かりやすい文字にする必要がありました。
そこで発明されたのが製図文字で、文字を書くとき、「はねない」、「はらわない」ことを意識して、線の最後はピタっと止めます。
また、文字を正方形に収まるように書くイメージを持つと、さらに製図文字に近づきます。
学科合格後、2ヶ月ちょっとで試験に挑まなければならない初受験生については、文字は練習する暇がないと思いますし、
その時間があるなら、作図手順を覚えたり、記述を覚えたりと、違うことに時間を使った方が良いです。
しかし、製図試験に1度落ちて、次の製図試験までたっぷり時間がある長期生については、ぜひ文字の練習をしてください。
おすすめなのは、総合資格、日建学院 どちらでもかまいませんが、過去の解答例で自分が気に入った文字のものを探して、解答例のコピーを取ります。 その解答例のコピーを見て、「車椅子使用者用駐車場」等、どんな課題が出ても使いそうな文字を切り取ってノートに貼っていきます。
そのノートを見ながら別の紙に模写して練習するか、トレーシングペーパーを使って、上からなぞる方法がおすすめの文字練習方法です。
文字の練習は、繰り返し練習すると、文字が早くきれいに書けるようになります。
作図実習でのレタリングでは、時間を気にしすぎるあまり、文字がどんどん荒く汚くなっていく傾向にあります。
普通の人は、普段文字を書くことは少ないはずです。 ましてや文字の練習などしていないはずです。
次の課題発表までたっぷり時間があります。 文字が早くきれいに書けるのは、強力な武器となります。
一級建築士 設計製図試験の採点基準が公表されていないので、なんともいえませんが、文字がきれいだからといって、加点されることはないと思います。逆に汚い文字だからといって減点されることはないと思います。
しかし、あくまで汚い文字であって、何が書いてあるか採点者に伝わることが前提です。 例えば、「屋外受変電設備」を書きなぐった文字で、採点者が何と書いてあるか認識できなかった場合、電気設備の欠落 ということで大減点になる可能性は否定できません。
また、採点者も人間です。採点基準にないからといって、全く影響しないかといったら、そんなことはないと思います。
文字が汚く読みにくい図面と、文字を丁寧に書いた図面とで、見比べた時に、丁寧に文字を書いた図面の方が印象がいいにきまっています。 もしかすると、最初に図面を見た時から、汚い文字を書いた図面については、荒探しをされてしまうことも考えられます。
文字が丁寧を通り越して、もし製図文字の図面を採点者が見たらどう思うか? 文字だけでプロっぽさが伝わります。 製図試験を受ける人の中で、製図文字をマスターしている人は、1割もいないと思います。 文字で図面の印象はガラッと変わります。 もし採点者が製図文字の図面を見たら、「合格にさせたい」と思っちゃうかもしれませんよ。 信じるか信じないかはあなた次第です。
昔の人は、上下に4mm感覚程度に薄い補助線を引いて、それに合わせて文字を書くと良いと言っていたらしいですが、それは青焼きの手書き図面の場合であって、製図試験においては、5mm方眼のマス目があるので、5mm方眼のマス目を使って書けば、きれいに文字は書けます。
文字の大きさについては、3種類を使い分けてください。
1番大きい文字は、「室名」で、4mm角の正方形に収まるように書くとよいです。
それ以外のほとんどの文字は、3mm角の正方形に収まるように書きます。
例外で、「受付カウンター」「ps」「スロープ」などは、さらに小さく2.5mm角の正方形ぐらいで書きましょう。
製図は横書きが基本です。どんなに狭い部分でも横書きとしてください。
例えば、製図用紙の上下方向に長細いドライエリアがあったとして、その中にドライエリアと書こうとすると、縦書きにしたくなるかもしれませんが、引き出し線を利用して、横書きでドライエリアと書いてください。 縦書きを混ぜてしまうと、素人っぽさが出てしまいます。
寸法の値は、原則ミリ単位となります。 例えば、7mではなく、7000? です。図面に表記するときは、単位であるミリ表記は不要で、7000だけで大丈夫です。
寸法線に寸法値を書くときの向きは、図面の下、または右から値が読めるように配置するのが原則です。
また、寸法線の境目部分については、「小さな黒丸(●)」で表現する人と、「斜め線(/)」で表現する人に分かれますが、「小さな黒丸(●)」の方が丁寧な印象を与えると言われており、こちらをオススメします。
ただし、時間がなければ、「斜め線(/)」も有りです。
Y方向のスパン寸法は、右から見て読めるように書くので、右に体をひねって無理な体制をしながらの文字入れになります。
前工程の内部のトイレや什器を書くあたりから平行定規を使うことがなくなりますので、
文字入れをするこのタイミングで製図用紙を製図板から外すという裏技もあります。
これで文字入れの効率が一気にあがります。
7000、6000などの数字は、必ずといっていいほど、製図するたびに登場します。
寸法線に書く寸法の値は、ほぼこの2つの組み合わせです。
これらをプロっぽく見せる裏技として、「0」3つをくっつけて書いて、「6」「7」との間は少しだけすき間を空けます。
また、「7」を書くときに、左側の縦線はなしで大丈夫です。これにより、7を書くときに、画数が2角から1角となり格段にスピードアップします。「8」は、一筆で書くのではなく、丸を2個書いて8としてください。
課題を解くと、7mや6mの等スパンを採用することが多いと思います。
例えば、3階建7m×7mスパンを縦4スパン、横6スパンで計画した場合、寸法線に7000という文字を30回書くことになります。
どうしても時間ぎりぎりになりそうだ。もしくは作図時間が足りないというときには、7000という文字は両端のスパンだけ書いて、
間のスパンは、「短い斜め線を2本(//)」書いて、ここも同じ7000ということを表現しましょう。
印象は良くいないかもしれませんが、完成させることの方が大切です。これで減点はないと思います。
室名を間違えるとやばいです。間違え方がひどいと室欠落と勘違いされても文句は言えません。
例えば、課題文には「多目的室」となっているのに図面に「多目的ホール」と書いてしまったらどうでしょう?
また、課題文には「多目的トイレ」となっているのに図面に「多目的便所」とかいてしまったらどうでしょう?
どちらも、けっして良いことはないです。 同じ意味と採点者が理解してくれれば一発ランク3やランク4といった大減点はないかもしれませんが、なんらかの減点はあるのではないかと思います。
室の特記事項についても同様です。室内に設ける「情報発信コーナー」を「情報コーナー」と書いてしまったら、これも減点だと思います。できれば、レタリングする際には、課題文を片手に、一字一句間違いのないようにしましょう。
レタリングの順序を課題文の上から行うと室欠落のチェックを同時に行えます。
この方法は、非効率でもあるので、レタリングの最後に、総チェックの形をとってもよいでしょう。せっかくスペースを確保していても、室の文字を記載しなければ、室欠落になります。
これで一発ランク4になる人が意外といるようです。