一級建築士製図の図面への補足説明のスピードアップ作図法
第9段階では、いよいよ図面への補足説明をしていきます。
図面への補足説明とは、採点者に伝わりにくい内容や、アピールポイントなどを文字で補足説明を図面に加えていく工程です。
ここは10分以内を目標としますが、もし時間が余ったら、20分くらいかけて、他の人よりも多くのアピールポイントを補足説明しておくと図面密度が上がって採点上 効果的です。
「図面への補足説明」について、過去問を見てみると、平成26年の道の駅までは、そのような問題文の表記が無く、平成27年の高齢者向け集合住宅の課題から突如現れました。
平成27年と28年については、「明示してもよい」という表現だったのに対し、平成29年と30年については、「明示する」と書かれているので、補足説明が明確に採点基準になって、補足の無い場合は減点、的確な補足があればあるほど、採点上有利に働いている可能性があります。
「図面への補足について表記無し」
「各図面には、計画上留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足して明示してもよい。」
「各図面には、計画上留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足して明示してもよい。」
「各図面には、建築計画、構造計画及び設備計画において留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足して明示する。」
「各図面には、必要に応じて、計画上留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足して明示する。 」
標準解答例を見てもらうと分かるが、問題用紙に、「補足して明示する」と言っているにも関わらず、標準解答例には、さほどたいした補足は無い。
それに対し、総合資格や日建学院の普段配布される練習問題の解答例には、ちょっとした文章の補足が図面にたっぷり記載されている。
どちらの解答が望ましいのか疑問に思いそうだが、書けるだけ補足は書いておくべきだと思います。
試験元である 建築技術教育普及センター は、標準解答例を公表するにあたって、下記のコメントを公表しています。
「計画の要点等については、公表することにより、解答パターンが定型化するなど、適 正な試験実施に影響を及ぼすことが想定されることから、公表しておりません。 」
これは何を意味するのか。 おそらく図面の補足もこの記述のように定型化するのを恐れて、標準解答例には載せていないのではないかと思われます。
建物の建築計画、構造計画、設備計画、セキュリティなど、クライアントに分かってもらうために、いかに分かりやすく図面で表現できるかは、一級建築士の大切な役割だと思うので、自分の計画した建物をいかにアピールできるかも採点に影響するのではないかと想像しています。
補足説明としては必須に近い内容なのが「景観配慮」の内容です。
過去の標準解答例にも必ずと言っていいほど登場しています。
例えば、ラウンジを景観の良い西側に計画したとして、もし図面への補足説明をしなかったら、景観に配慮してラウンジを西側に計画したのか、たまたまその位置になったのか採点者には判断がつきません。
それに対して、ラウンジを景観に配慮して西側に計画したことを図面にアピールできれば、採点者も気持ちよく「周辺環境への配慮」について加点できます。
もし、時間がなくて補足など書いている暇がないという方については、
景観の良好な室から矢印を書いて、「景観」の2文字描くだけでも良いです。
「自然通風」も毎年 標準解答例ではおなじみの補足説明です。
平成26年は「通風」、平成29年は「自然換気」、平成27年、28年、30年は「自然通風」と微妙に名称を変えてはいますが、ほぼ必須の補足説明となっています。
ただし、平成30年の標準解答例2には、そのような補足説明はありませんので、絶対ないといけないわけではなさそうです。
平成28年には、標準解答例1、2どちらにも10ヶ所という大量の「自然通風」の補足説明があり、しつこいようにも見えますが、その建物がパッシブデザインであることは良く伝わります。
断面図にはよく描く補足だと思いますが、平成28年については、各階平面図にも、風の流れを示す矢印と「自然通風」の表記がありました。
問題用紙の「計画に当たっての留意事項」欄に「自然通風を積極的に取り入れる計画とする」というものが、お決まりのように明記されており、おそらくその配慮が採点者に伝わらなければ減点されているものと思われます。
言い換えれば、採点者に伝われば良いのです。
平面図は必須ではないかと思いますが、最低限断面図には、2ヶ所以上の表記が欲しいです。
「自然通風」という文字を描くのは時間がかかるので、矢印と「通風」もしくは「風」の表記だけでよいと思います。
書く場所は、トップライト部、外壁のサッシ部、内部間仕切上部(開閉可能な欄間)に表記があれば、建物内部を風が通り抜けることが伝わります。
自然通風とセットで大切なのが「自然採光」です。
これは、トップライト部分に矢印とセットで1ヵ所書いておけばよいです。
時間短縮のために、矢印と「採光」「光」だけでよいと思います。
平成27年以降、建物に対するアプローチ計画についての補足説明が毎年 標準解答例には記載されています。
アプローチについては、毎年 それぞれテーマが違いますが、大きな採点基準になっていることが予想されるので、採点者にアプローチ計画をしっかり考慮していることをアピールしないとうまく伝わらず減点される可能性があります。
例えば、平成30年は、北側にある駐車場からのアプローチ、南西にある敷地出入口からのアプローチ、敷地北西にあるカルチャーセンターからの動線が全て満たされる必要がありました。
平成29年は、車両動線がテーマの1つだったので、車の流れや、歩車分離、管理者動線などへの配慮が求められました。
平成28年は、北東にある駅からの利用者動線が求められました。
アプローチの補足については、問題文の読み取りができているかが評価の分かれ目になります。 毎年求めれるものが違うので、何をアピールすればよいのかを、問題用紙から見定める必要があります。
逆に、求められている動線配慮を問題文から読み取れて、それを補足説明で的確にアピールできれば、かなり合格に近づきます。 動線については、毎年 必ず何かしら求めてきますので意識して問題文を読んでください。
もし作図の時間がなければ、人と流れが伝わればよいです。
矢印と「利用者」「管理者」だけでも伝わります。
大空間で柱を抜くときはプレストレストコンクリート梁、もしくは鉄骨梁を部分的に使用しますが、ほとんどの人は、親和性を考慮してプレストレストコンクリート梁を採用すると思います。
しかし、補足説明なしでは、プレストレストコンクリート梁を採用していることは伝わりませんので、どこに使われているか表記しておく必要があります。
文字が長いので、時間が無ければ「PC梁」と書いておけばよいです。
平成30年の標準解答例の中から図面への補足の一部を抜粋します。
平成28年の標準解答例の中から図面への補足の一部を抜粋します。