一級建築士製図エスキスの条件整理(アプローチと敷地利用計画)
このページでは、エスキスの手順(3)として、アプローチと敷地利用計画について、
独学の初心者にも分かるように、解説していきます。
アプローチと広場や駐車場等の敷地利用計画は、建物形状や動線計画の基本となるもので、
これを試験元と違う想定で進めてしまうと、建物内部が計画しづらく、かなり苦しい状況になります。
このプロセスを確実に踏んでから次の手順に進みましょう。
問題用紙に書かれてある敷地図をエスキス用紙に書き写します。
道路や周辺環境についても、最低限の情報で良いので書き写しておきます。
問題用紙に直接描いて検討しても良いのですが、敷地図をエスキス用紙に書き写すという作業で
敷地の周辺環境を頭にすりこむことができます。
また、書き写すという作業を入れることで、ただ ぼぉ~と見ているときにはない気づきも生まれることがあります。
まずは、敷地の周囲にある「肯定的環境」と「否定的環境」の把握から入ります。
さきほどエスキス用紙に書き写した敷地図の周辺環境に、肯定的環境(◎)、否定的環境(△)、道路(〇)の印をつけておきます。
「肯定的環境」とは、公園、河川敷、湖、樹林など、自然があり開放的な空間が広がっている空間のことです。
景観に配慮したい室はもちろんのこと、利用者が使う室については、極力 肯定的環境がある側へ配置することを心がけたいです。
「否定的環境」とは、集合住宅に代表されるようなプライバシーへの配慮が必要な空間です。
そちらに室を配置すると、窓から集合住宅が見えたり、逆に見られたりする問題が発生します。
道路については、開放性という意味では肯定的環境ですが、プライバシーや静寂性という意味では否定的環境です。
そのため、道路は中間の丸(〇)という扱いにしておきましょう。
上図の敷地図例は、当サイトオリジナル長期課題①のものです。
画像をクリックすると、別ウィンドウで問題文全体をPDFで見ることができます。
エスキス用紙の敷地図に、アプローチの位置を仮置きします。
アプローチ計画とは、「利用者アプローチ」と「サービスアプローチ」の2種類があります。
利用者アプローチとは、交通量が多い歩道付き道路からとするのが望ましいです。
場合によっては、人通りが多いのであれば、遊歩道からの利用者アプローチもありです。
サービスアプローチは、利用者アプローチに支障がないサブ道路からとし、それぞれのアプローチを分離してやると
うまく行くケースが多いです。
エスキス用紙の敷地図に、広場の配置を想定して、一番ありえそうなところに広場を仮置きしましょう。
他にも候補がある場合は、同じ敷地図でも良いので両方描いておきましょう。
広場は、「〇〇広場」という表現のほか、〇〇スペース、〇〇ガーデン、〇〇テラス、〇〇プラザなど、いろいろな表現で出題されます。
広場で一番注意したいことは、「その広場は誰が使うのか?」ということです。
その対象者は、大きく分けて2つあります。
1つは「建物の利用者専用のプライベートな広場」で、もう1つは「地域住民に開放されたパブリックな広場」です。
プライベートな広場であれば、道路に面しない肯定的環境に広場を配置したいです。
パブリックな広場であれば、人通りの多い道路側が望ましく、交差点に面しているのがベストポジションです。
エスキス用紙の敷地図に、駐車場の位置を仮置きします。
駐車場は、主に「利用者用」と「サービス用」に分類されます。
「利用者用」は、主出入口に近接して計画し、2台以上の場合も同じ場所にまとめて計画するのが基本です。
「サービス用」は、利用者動線と交差しない位置で、通用口や荷解き室、厨房に近い位置が望ましいです。
また、2台以上の場合は、まとめて配置するか、サービス動線を分離させるため、あえて駐車場も分散配置するのもテクニックの1つです。
駐車形式は、原則 並列または対面駐車としますが、それらの配置が難しい場合、サービス用駐車場に限っては「串刺し駐車」も採用できます。
エスキス用紙の敷地図に、駐輪場の位置を仮置きします。
駐輪場は、主出入口付近に設けるのが望ましいが、難しい場合は、駐輪場から主出入口までの敷地内通路を確保する。
並列配置、対面配置のどちらを採用するかは、敷地内に計画できる奥行と幅のバランスで決めると良いです。
1台当たりのスペースは、課題文で指定されない場合、原則として0.5m×2mとします。
たまに2段式で要求される場合もあるので注意が必要です。
いかがでしたか?
このページでは、エスキスの手順(3)として、アプローチと敷地利用計画について、 独学の初心者にも分かるように、解説しました。
ここでは、パターン出しに徹して、けっして決めつけないことがポイントです。あり得るパターンの可能性を残したまま次の手順に進みましょう。
ランクⅠを取るためには省略できない手順の1つです。明日から実践してみてください。