一級建築士製図のエスキス
エスキスを2時間以内に終わらせることはできますか?
もしエスキスに時間がかかってしまう人は、手順やテクニック不足が原因かもしれません。
そんなあなたに100分で完成するエスキス手順を紹介します。
エスキスで大切なことは、課題が変わっても、手順は守るということです。
遠回りに思えても、毎回同じやり方でエスキスすることが大切です。
下表の手順で一度試してみて、自分なりにアレンジを加えて、「自分のエスキスの型」を完成させましょう。
手順 | 内容 | 時間 | |
---|---|---|---|
手順(1) | 課題の読み取り | 1回目・最重要な内容を確認 | 7分 |
手順(2) | 2回目・マーキング | 13分 | |
手順(3) | 条件整理 | アプローチと敷地利用計画 | 3分 |
手順(4) | 動線計画 | 2分 | |
手順(5) | 空間構成の把握 | 2分 | |
手順(6) | 適宜面積の設定 | 9分 | |
手順(7) | 駐車場、駐輪場 | 2分 | |
手順(8) | 記述のキーワード | 5分 | |
手順(9) | 断面検討 | 10分 | |
手順(10) | 平面検討 | 建築可能範囲 | 2分 |
手順(11) | スパン割り・グリット | 1分 | |
手順(12) | ゾーニング | 12分 | |
手順(13) | チェック | 5分 | |
手順(14) | プランニング | 30分 | |
合計時間 | 100分 |
課題の読み取り1回目は、この条件を外したら大減点になる項目を探して、オレンジマーカーすることです。
重要な項目とは、「景観配慮」「設置階指定」「天井高指定」「動線指定」等です。
手順(1) 課題の読み取り1回目の詳細はこちら
課題の読み取り2回目は、内容を整理するため、ピンク、緑、黄色、赤ペンを使います。
エスキス用紙に、課題文の敷地図と道路を描き写します。
周辺環境も簡単に描き写します。
その敷地図に、もっとも利用者のエントランスとして適切な位置に矢印を書きます。
そして、2面道路や3面道路の場合、違う道路から サービスアプローチを想定して矢印を描きます。
もし、2パターン以上ある場合は、両方描いておきます。
また、そのアプローチとしたときに想定される広場や駐車場、駐輪場の位置を描きます。
2パターン以上描いたときに、なんとなく、こっちの方がやりやすそうだな。
というのがあれば、そちらに二重丸をつけておき、第一候補としておきます。
後で行き詰ったときに、アプローチ設定を変更すればうまくいくケースがあるので、
一応、想定したパターンは全て消さずに残しておいてください。
手順(3) 条件整理(アプローチと敷地利用計画)の詳細はこちら
課題文から重要な動線の指定がある場合は、頭の整理のために、図としてエスキス用紙に書きとめておきます。
課題文に指定がなくても、レストラン厨房や、図書館、店舗など、搬入経路が必要なものは、同様に図で書きとめておきます。
手順(4) 条件整理(動線計画)の詳細はこちら
階指定がある室や屋上広場、2層にわたる大空間や、吹抜等、空間構成に大きな影響を及ぼすものを
簡単な断面図で描いてみます。
室の指定で、「〇〇室を見下ろせるようにする」というのもこの断面図で分かるようにしておきます。
もし、屋上広場で2階床レベルと3階床レベルのどちらも想定できる場合は、この段階で決めつけず、両方ありうることが分かる図にしておきます。
手順(5) 条件整理(空間構成の把握)の詳細はこちら
室の大きさが「適宜」となっているものに対して、だいたいの大きさを特記事項の内容から想像して仮で設定します。
ここでは仮の設定なので、16㎡とか28㎡とか細かく設定するのではなく、16㎡であれば15㎡でOKですし、
28㎡ではなく30㎡でOKです。
ここでは、あまり考えず即決する必要があるので、もし目安を忘れたら、2㎡/人 で計算しましょう。
例えば、20人程度が利用するカフェであれば、40㎡ぐらいを目安とすれば大丈夫です。
もし、和室が適宜の場合、特記事項に8畳、押入れ、収納等の指定があると思います。
これをエスキス用紙に実際に書いてみて、どれくらいの面積が必要か考えましょう。
また、「〇〇コーナー(30㎡)」「〇〇コーナー(25㎡)」等、いろいろなコーナーが特記事項で指定されて、室全体の面積としては適宜ということが良くありますが、これも実際にエスキス用紙を使って、室内の配置を検討してみないと、実際にどれくらいの大きさを想定すればよいか分かりません。
手順(6) 条件整理(適宜面積の設定)の詳細はこちら
駐車場の配置パターンを洗い出しましょう。
例えば、HPとSPを分けるパターンと、まとめるパターンがあります。
もし多台数の駐車場の場合、まとめる場合でも、2列の駐車場とするか、1列で並べるかで、建物の形状が変わってきます。
ここでは、どのようなパターンが想定できるか洗い出すことが大切で、決めてはいけません。
ただし一番 都合の良いパターンは1つ選んでおきましょう。
手順(7) 条件整理(駐車場、駐輪場)の詳細はこちら
記述の問題を見て、どのような解答をするか、ある程度想定しておき、キーワードで書きとめておきます。
例えば、「図書室の配置の位置とその位置とした理由」を記述する問題があったとすると、
「公園のある北側→景観」とメモしておけば、後でゾーニングする際に、早い段階で北側に配置するよう意識することができます。
記述で問われている「室の配置」や「動線計画」は、優先度が高いので、意識付けのためにもこのタイミングでメモするのが良いです。
手順(8) 条件整理(記述のキーワード)の詳細はこちら
各室の階振り分けをして、立体的なボリューム検討をします。
部門毎にフロアゾーニングしたり、関連する室はなるべく同じフロアになるよう配慮して階振り分けします。
これで、1フロアあたりの必要面積が想定できます。
ここで、手順(5)のものより、さらに詳細な断面図を描きます。
手順(9) 条件整理(断面検討)の詳細はこちら
一番計画しやすそうなアプローチ、広場、駐車場、駐輪場の配置より、へりあきの寸法が分かるので、残りの建築可能範囲を調べます。
また、課題文の建ぺい率から求めた最大建築面積と比較して、建築可能範囲が建ぺい率の範囲に納まっているか確認します。
もし、建ぺい率にひっかかるようでしたら、建築可能範囲を少し狭くすることを想定しながら先に進みます。
手順(10) 平面検討(建築可能範囲)の詳細はこちら
室の要求面積から40㎡系と50㎡系のどちらがプランニングしやすいかを考え、
40㎡系の場合は、7m×6mグリットとし、どちらでも良さそうな場合は、7m×7mグリットを想定しましょう。
建築可能範囲から均等スパンを基本とした建物の器を想定します。
想定した器が、手順(9)で計算した1フロアあたりの必要面積とほぼ同じぐらいになるのが面積的には良い器となります。
器の方がやや大きくても大丈夫ですが、50㎡以上大きい器とした場合、
プランニングで面積調整による無駄な吹抜やピロティなどが発生して見苦しくなります。
手順(11) 平面検討(スパン割り)の詳細はこちら
ゾーニングでは、部門全体のかたまりを、どのあたりに配置するかを決めていきます。
部門がないような課題は、大きな室や景観配慮等、配置に指定がある室から順番に配置していきます。
このタイミングで階段とエレベーターのコア配置に悩む人が多いと思いますが、
コアの位置が確定できるのはけっこう最後の方です。
ゾーニングの段階でも確定できず、プランニングのときにようやく位置が確定するケースもあります。
アプローチが決まったら、サービスアプローチの反対側の脇に一旦仮置きしておき、後で動かせばよいのです。
このタイミングでコアの配置に悩んでも、どうせ決まらないので無駄な作業です。 一旦は仮置きしておいて、後で都合悪くなったら動かそう。という想定でいきましょう。
言い換えると、コアの位置を決めてしまうと、その後のプランニングで、室の面積が足りなくなる部屋が出てきたり、
室形状が悪い室が出来たりして、かなり苦しむことになります。
手順(12) 平面検討(ゾーニング)の詳細はこちら
エスキスが終わった後に、中間チェックを行いますが、そのチェックとは違います。
ゾーニングが終わった後、プランニングに入る前に行う簡易チェックです。
ここでは、条件整理の動線計画と、大部屋や吹抜が配置できるか、記述のキーワードを加味できているか。
等、必要最低限のチェックを行います。
時間がない場合は、課題の読み取りの際、オレンジ色にマーカーした部分のチェックだけでも効果があると思います。
手順(13) 平面検討(プランニング前チェック)の詳細はこちら
きれいなゾーニングができていれば、ここは30分で終わりますが、
少々無理があるゾーニングの場合、プランニングがなかなかまとまらず苦しみます。
もし、少々無理してでも、なんとか納められるなら、強引に突き進んでください。
どうしようもないと思ったら、ゾーニングに戻って、別案を考えてみましょう。
プランニングのコツは、大きい室をコアのあるホールから遠くに配置することと、
廊下位置を先に決めてから、小さい室を配置していくことです。
手順(14) プランニングの詳細はこちら
どうでしたか? エスキスが100分で終わる方法は習得できそうですか?
このページを見ながら、同じ課題で良いので何度も繰り返しエスキスして手順を覚えて下さい。
明日からあなたは、エスキス名人です。